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触って、七瀬。ー青い冬ー

第22章 白銀の砂



朝目が覚めると、時計は昼を指していた
久しぶりの快眠だった。

しかし紘が見当たらない。


「…おはよう」

紘は朝風呂から上がってきた。いや昼風呂か。

「お、おはおはっ」

「…?まだ寝ぼけてる」


いや違います。紘はよく体を隠しもせずに部屋を歩き回るので当然あの、局部も丸見えなわけだ


「下着知らない?」

「ああーっ、多分そこの棚…に…」

「ああ、あった」

「…」

危ない、非常に危険だ
こんな不安材料があったとは予想していなかった。

全く、どうして隠さないそこを!

しかし外国の血が混ざるとやはり平均的な大きさを優に超えるようだ
そういえば僕もだが…張り合うつもりは無い!
全く、服さえ着ればこんなことを考えずに済むものを…

でも紘は僕を何だと思っているんだろう
そういえばゲイだとも言っていないし
女装も理由をは伝えていないし

ただの弟的に考えているのならば、
むしろ隠す方が不自然か…?

兄弟とはどんなものか、全く見当もつかず僕は悶々とするばかりだった

その日も夜になって、窓の外は雨模様
もう既に水滴が窓を打ち始めた

今日はとても退屈だった気がする
紘はずっと眠っていた
僕も眠っていたかったが眠れなくなってしまい
絵を描いて遊んでいた

描いたのは船の絵だった

こんな夜、電気は消してオレンジ色のライトをつけて気分を落ち着かせる

雨は心地いい音楽になるが、弱っているときには不安を煽る恐ろしい炎のように迫ってくる


紘は眠り始めたら目を覚さなかった
どうしてそんなに眠れるのかと聞きたいくらいだったが、僕が聞く暇も与えずに眠っていた


「…」

ふと思い立って、部屋に置いてあったグランドピアノを見た

弾きたい、と思って前に座ってみたが、
夜だし大きな音を出すのは憚られる。
紘は眠っているし…

しかしあれだけ眠っているのだから
少し音を出したくらいじゃ起きないだろうと思った


薬指と人差し指に力を入れて、二音を鳴らす


そこから滑る音は手が覚えた変わらない動きで
雨音の激しくなるにつれ僕の音も深く響いた


月の光はまだ見えなかった
空も暗いままだった
最近月を見ていない
見上げている余裕もない程不安で苦しい日々
月の光を見せてくれない明るい夜の街
ずっと何年も閉じ込められていたような気持ち


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