触って、七瀬。ー青い冬ー
第22章 白銀の砂
紘も画面の変化に気づく
《私は全てを知っている。
お前の名前も家族も生業も、全てだ。
お前が隠してきたことも知っている》
「…」
《疑うか?それなら勝負をしよう。
道具はその飴玉だ》
「え、…これ桃屋さん?」
「…」
《その中に一つだけ、黄色い石の入った飴玉がある。その石を見つけられたらこの部屋から出してやろう。いくら時間がかかっても構わないが、途中で死なないように精々気をつけるんだな》
ばち、と画面が真っ黒に変わった
もう一度電源を入れてみても、何も映らない。
「これも実験ってやつなのかな。
死なないようにって、ただの脅しですよね…?」
「さあ、…どうだろう」
紘は考える素振りをするが、
さっきの文字は僕の予想なら桃屋の悪ふざけに他ならない。
「どっちにしても結局3日だけっていうのは嘘か…
この大量の飴全部舐めろってことですもんね」
これは何の罰ゲームだ?
「その必要はない」
紘は袋から飴を全部出して、床に広げた
個包装はされているが、透明な袋だから見た目の違いは分かりそうだ
「見るだけでわかるものですか?」
僕はじっと見つめるが、中々中心部までは見られない。つまり中に何かが埋め込まれていてもよく見えない。
紘は一つ一つつまみ上げ、光に透かしてみている。
「こうして透かせば、
目星くらいはつけられるんじゃない」
「…よくわからないです。
ていうかこんなゲームやめませんか?
元から実験って言われてたけど、ただ桃屋さんが僕で暇つぶししてるだけだとおもうんですよ」
「そう」
紘はまだ、真剣に飴玉を選別している
「僕、誰かに電話して来てもらうことにします。
多分、来客だって言えば流石の桃屋さんだってこんな遊びやめるだろうし」
「そうしたければやってみればいい」
紘は立ち上がり、部屋の箪笥を漁り始めた。
「何か探してるんですか?」
「…」
紘は返事もしない。
僕は諦めて助けを呼ぶことにしよう。
こういう強行突破に強そうなのは…
高梨だ
色んな人脈を使って銃も何でも使ってしまいそうだが、そんな理不尽な力が今は必要だ
でも、七瀬夕紀の名前で連絡を取ってもきっと奴は電話を取らない
学校も店も辞めるほどの状況だ
何が直接的な理由か聞いたわけではないが
香田の話を聞くと《ナナちゃん》のせいらしい