触って、七瀬。ー青い冬ー
第22章 白銀の砂
やっぱりあんなのやるべきじゃなかった。
学校も店も、辞めて欲しくなかった。
一体何処にいるんだろう
もし僕が安否の確認をしても、許されるだろうか
…でも今は、まず僕自身の身柄を解放してくれる人を探さないと
香田は頼るには少し頼りない
しかし、他に頼るあてもない
「これは違う、これも」
紘は青白いペンライトを飴玉に当てていた
違う、といって投げられた飴玉を拾ってみる
よく見ればそれは綺麗な水晶みたいだった
中にはラメのような輝く星屑が散りばめられていて
きっと美味しいに違いない
《精々死なないように》
あれはどういう意味だ?
袋を破って取り出してみる
紘は何を見ていたんだろう?
「アイ!」
「え?」
叫んだのは紘で、ばっと立ち上がり僕の手から飴玉を奪い取った。あまりに素早かったので取られていることに気づくのに時間がかかった。
「ドゥラク!」
その言葉の意味はわからない
紘は怒っているようだった
「す、すみません」
紘は飴玉を見て言った
「…七瀬は知らないかもしれない。けど
これは特別に危険な物質が含まれているかもしれないもの。簡単に触ってはいけない。
すぐに手を洗ってきて」
僕はこくこくと頷いて、紘は胸を撫で下ろして飴玉をティッシュに包んで巾着袋に戻した。
「ゴミ箱に捨てるのも誰かが気づいて拾ったら危険だから」
「でもそんなに危険なものがどうして、」
紘はさあね、と言ってまた新しい飴玉の検査を始める
「…桃屋って奴、相当の情報屋らしいね。
もうここまで調べてあるなんて」
これも違う、と飴玉は投げられた
「何を、隠してるんですか」
紘は背を向けて答えなかった。
「手を洗ってきて。
粘膜に触れないように気をつけること」
僕にも隠し事がある。
それと同じように紘にもあるのだろう。
隠すのは信用していないからということに限らず
その事実がこの関係を切る理由になりえるからだ
「…はい」
紘が家族であることに間違いはないはずだった。
でもその証拠は何処にもなく、
調べる術もなく、
紘を信じる理由もなかった。
指先には、飴玉にまぶしてあったラメのような粉末がキラキラと光っていた
紘の言葉を信じるなら、これは危険な物質らしい。
それ以外に何か、隠れていることはないたろうか。