触って、七瀬。ー青い冬ー
第22章 白銀の砂
それを野蛮だというあんたがいる
「も、無理…っ、紘にぃ…」
七瀬が泣くが、それが火に油を注ぐ
「…ごめん」
「っぐ、いっぐ…っいくぅ…」
七瀬の腰が激しく跳ねた
がくがく足が痙攣している
「は…っ、はっ…」
俺は人が痙攣しているのを見るのが好きで
興奮が絶頂に達した
「っんん…ん…七瀬…」
確かに俺は誰かを愛する資格がないように思えた
だから、これが最後でも後悔しないように
残らず七瀬に注いでしまいたかった
「あー……、はぁ…」
ようやくおさまったそこを抜くと
白い液が溢れて床の絨毯を白くした
「ああ、もったいない」
七瀬は足を震わせたまま眠っていた
明日の朝、きっと全身が筋肉痛になっているはずだ
「ごめん、おやすみ」
人間は過ちを犯す
あんたもいずれ取り返しのつかないことをする
それを墓場まで持っていけるか
それが俺にとっての正義だ
床に転がった飴玉を舐めると
またいい夢が見られる
ただ、目覚めは終わりのない吐き気で
世界が真っ暗に染まるが
それもまた、払うべき代償だ
…
「…出ないか」
「誰ー?あ、お友達?」
「そんなもん、次どこ行きたい?」
「買い物に行こうよ」
俺の人生は、多分、終わったのだ
だから今、こうして当てもなく郊外のショッピングモールなんかを歩いている
「あ、見てあれ。新しいドラマだって」
「…あ、」
モールの中にある、巨大なスクリーンに映ったのは見覚えのあるあの顔だった
「へー、また新しい俳優が出てきたね」
「…」
今の俺は起きなければいけないのに
まだぐずぐず布団に包まってるみたいなだらしのなさで
ありもしない夢を見続けている
最後に顔を見てから、もう何ヶ月経ったか
美人は3日で飽きるというのはどこかの馬鹿が言った嘘で、俺は毎日、毎朝、毎晩あの顔を思い出して恋焦がれている
しかしそれもあまり深入りするとだんだん気がおかしくなってしまっていけない
例えば昔録音した喘ぎ声で慰めをするとか
昔手首を縛ったネクタイを持ち歩いてみるとか
窓の外に捨てられてしまった指輪を雨の中探し回って、泥まみれになって見つけ出したのはいいが
それを返すのも許されないようなので寂しく自分の手につけているしかないとか
「伊織、伊織!」
「あ、ああ…何?」