触って、七瀬。ー青い冬ー
第23章 舞姫の玉章
父はサハルには新しく飴を与えた
「ありがとうございます」
サハルは私の顔を見ながら言った
私は汗をかいて、自分は他の兄のように薬の実験台にされてしまうと思った
まして、自分の体質ではしばらく寝たきりになる程度では済まないかもしれない
父は、しかし、私の拘束を解いた
「イヴァン、お前は兄の飴を奪ったな」
「…はい、本当に申し訳なく思っています…」
父は私の頬を撫でた
「いいんだ。私がお前に褒美をやらなかったからこんな騒動になったのだ。だからお前にも正式に渡してやる」
「ほ、本当ですか…!」
サハルは何か言いたげにこちらを見たが、すぐに顔を背けた
私は喜び、宝石のように輝く青色のの飴をもらった
「ああ。いいかい?それはお前が初めて舐めるものだからな。大切に味わいなさい」
「はい、お父様」
飴を舐めてみると、特段気分が悪くなることもなく、以前盗んだ飴のような甘さが私を喜ばせた
「さあ、私は仕事に戻る。お前達も、飴を舐めたら仕事に戻るんだ」
父は部屋を出た
その途端、サハルは私に飛びかかった
「イヴァン、出せ」
そう言うサハルは、飴をまだ舐めていなかった
「でも、…これ美味しい」
「駄目だ!舐め続けたら、皆も犠牲になる」
「兄さん、落ち着いてよ」
「出せ、早く!」
私は知らなかった。薬の恐ろしさも、サハルの正しさも。
私はムキになって飴を噛み砕き、一気に飲み込んだ
「なっ…!イヴァン…っ」
私が飴を飲み込んだと分かると
サハルの手は私を離した
「はあ…僕は部屋に戻るから」
深い息を吐くと、
サハルは何かに反応した
「駄目だ、イヴァン、…早く、抑えないと…」
「何?…僕が悪かったのはわかってる。
でも、兄さん達だって悪かったんじゃないの?
サハル兄さんもそう思うでしょ。
ここで寝てる奴らはみんな、僕達を見下してたんだ」
「…イヴァン、そうだ、でも」
「僕とサハル兄さんは国賊の血が混ざってるって、他の兄さんが言ってたよ。そのせいで兄さんの髪は黒いんだ!僕も黒い髪が生え始めたんだ、隠してたけど…いずれ目立つようになる。隠さなきゃならないのはこの兄さんたちが見た目で僕らを差別してるからだろう!だから罰が当たったんだよ。父さんが僕を叱らなかったのはそういうことだよ」
サハルは一歩下がった
「少し違う」