触って、七瀬。ー青い冬ー
第23章 舞姫の玉章
「違う?」
「父さんは、…、黒の血、欲しかった。
それで、っ…作る」
サハルは歯を食いしばった
椅子に縛られていた兄達は、何かに起こされたように目を開いた
「…兄さん、何か、おかしいよ?薬を打たれたわじゃないの」
私は恐ろしく感じてサハルの体を揺すった
「匂いが、…強い」
サハルは私を払い除け、鼻を覆った
「近づくな、早く出るんだ」
「兄さん?話を逸らさないで」
バチ バチッ
何かが断裂する音がした
振り返ると、椅子に拘束されていた兄達が頑丈なはずのベルトを引きちぎって立ち上がっていた
彼らは汗を流し、興奮した様子でこちら側に迫ってくる
「…イヴァン、逃げろ…!」
サハルは言ったが、すぐに目の色を変えて私を睨みつけた
「…に、逃げる?」
サハルは呟いた
「…孕ませてやる」
「サハル、っああ!」
サハルは私を椅子の上に放り投げた
「痛いよ、何するんだよっ…!離して!」
サハルは器用に暴れる私を椅子に拘束した
「何で、サハル!」
サハルは私を見下ろし、薄ら笑いを浮かべた
普段笑った顔など見せない、内気なはずの彼が
人を拘束して虐げて喜ぶなど信じられなかった
「美味そうな匂いしてるな、イヴァン」
サハルは私の股間を足の裏で撫でた
「っ…う、あ、そこはっ」
「さっき抜いてやったのに、だらしない」
サハルは私の髪を掴んで引っ張った
「ひっ…ごめんなさい、でも、飴舐めたら…か、勝手に」
「勝手に、か…」
サハルは、私が着ていた着古した麻のシャツの裾から冷たい足を忍び込ませた
「っ…!」
足先は氷のように冷たい
それなのに、
体の芯が徐々に熱くなり汗がこめかみに滲んだ
「熱いな」
サハルの足は私の脇腹を撫でる
「は、っはは、やだよ、くすぐったい、」
笑いがこみ上げてきた
笑えない状況で、汗をかきながら体をよじり
一人で笑い声を上げているのは奇妙だった
サハルの足が私を笑い死にさせようかという時、
ようやくくすぐりが止まった
「は、はぁ、はぁ、」
ふ、とサハルは満足げに笑う
「滑稽だなイヴァン。兄さん達が喜んでるよ」
サハルが言ったことでようやく気づいたが、
兄達は私を取り囲み見物していた
まるでそこにある唯一の娯楽が私であるかのように