触って、七瀬。ー青い冬ー
第23章 舞姫の玉章
つ、と指が入りくすぐる
「人のこと散々浮気性って罵っておいてこれはナシ
じゃね?」
ゾクゾクする
「うっ、」
一気に汗が噴き出すみたいで喉が乾く
水分が欲しいだけなのに
唾を飲むとまるで、目の前の高梨に興奮しているみたいに錯覚する
「あ、もう一つ怖いこと教えてあげようか?」
高梨は僕の口に指を突っ込み、舌を引っ張った
「は、らへ」
「やっぱり、舌真っピンクになってるし…
どんだけキメたんだよてめえはよ」
高梨は僕を問い詰めた
舌を引っ張る手をはたいて払った
「関係ないだろ」
飴のことだろうと分かったが、それを責められる筋合いはない
「はぁ?あるに決まってんだろ
俺が何のために立花の犬になったと思ってんだ?
お前のためだよって何遍言ったらわかるのかなあ
ナナちゃん」
高梨に日を置いて会うと体の大きさに驚く。
紘さんも背は高いが、高梨は身長そのものに加え厚みがあって手がよりデカい。
そのデカい手が脇腹をさすってくる
たださすられているだけのはずなのに
体が逃げるように動いてしまう
「たっ…頼んでねえんだよこっちは最初から!
今日だって助けに来いなんてひとッことも言ってない!押し付けがましいしウザいんだよ
今更トモダチ面してくんじゃねえ…っ!」
高梨が今から人を殺すような目で睨みつけてくる
手は相変わらず腰回りで焦ったく動く
ビク、ビク、ビク
背中が反れる
「ふ…」
高梨は僕の前髪をかき揚げた
額がぶつかりそうな勢いで顔を寄せてくる
「死んでてもおかしくない状態だったらしいけど?
お前さあ、俺がこの数年間頑張ってきた意味全部パーにする気?そうだよなぁ勝手に死のうとしたんだからな、あの狂った足長おにいさんにマンマと騙されて?」
「紘さんの何を知ってんの?そんなに悪く言う必要ないでしょ、大体高梨の知ってることが全部本当だって証拠もない!」
「それがなんだよ?あいつがそんなに可哀想か?」
高梨は僕の手首を掴みあげる
「だって、紘さんは本当に僕のこと…
家族だって…兄弟だって」
僕が見た微かな希望の光
それさえ虚構だったって言うのか
「だったらなんだよ…もしあいつがお前の兄貴だったとしてなんの意味があんだよ。お前は血の繋がりがあるってだけで信頼するのか?」
「そうだよ…」