触って、七瀬。ー青い冬ー
第23章 舞姫の玉章
高梨は歯ぎしりをして僕を睨んだ
「わかんねぇなその理屈は…
俺は両親が死んでから翔太と二人で生きるしかなかった。でも俺は翔太なんかいなければ良かったと思った、殺してやろうかとも思った。けど唯一あいつだけが親の血を持ってる個体だ。奴を殺して俺が死んだら親の血も途絶える。それは俺の望みじゃなかった。だからこそ翔太は永遠に恨みを果たせない敵になった。あいつは俺にいろんなもんを植えつけてからいろんなもんを奪った。お前は翔太と付き合って何を思った?俺と翔太が羨ましいか?それともお前はただ兄が欲しいのか?
…だから弟の俺じゃなく兄の翔太を好きになった?
…なんであの夜俺から逃げた」
独り言かと思った
高梨は僕の口が動くのを石のようになって待っていた
でも、僕もまた石のように固まってしまった
「言え」
頭の中がパニックになっていた
突然僕は高梨の部屋にいる感覚になって
「センセーが良いって、あの日お前は言ったけど
本当は違ったんだろ」
そう、正直に言ってしまえばいい
「…気持ち…よかったから、」
僕はいつも弱虫泣き虫の赤ん坊で
甘えたがりで頑固で人任せ
「初めてで…先生以外の人とそういうことするのが…だから、」
高梨は僕を責めるように言った
「気持ちよくなれればそれで良かった、か…」
確かに僕は気持ちいいことに流される
だって滅多にないから、
気持ちよくて幸せな時間なんて
「それは、違う」
「俺じゃ満足できなかったってこと?
まあ、あの人の方がその道に精通してるかもしれないな」
その道
「今回もそれが理由だろ?
紘がお前の望むように気持ちよくしてくれたから、
体で繋がったら心も一緒にもってかれた。
大体想像はついてたけどさ、お前単純だから」
「高梨に…何がわかんだよ」
突発的に沸騰した怒りで
思い切り高梨に頭突きした
「う"っ…ってえー…」
高梨が頭を抱えた隙に形勢逆転
「単純だって、言うけど
僕…高梨が思ってる程簡単じゃないから
誰でもいいなんて思ったことないから!
ふざんけんな…俺は」
「…おれ?」
高梨は呆けた顔で聞いた
「そうだよ!俺だよ!ボクなんて言って弱々しいと思われたくないしなんかいずくなってきたからもう言わないよ!」
高梨はまだ頭を抑えている
「いず…?え?いや、いいけど、それはどっちでも」