
俊光と菜子のホントの関係
第9章 『勝手にジェラシってる』
しばらく電車に揺られていると『まもなく、○○駅。○○駅に到着です。お降りの際は……』と、車内アナウンスが耳に付いた。
その直後、電車は菜子の高校の最寄り駅のホームに差し掛かった。
アイツ……いるかな?
ゆっくりと停車しかかると目を配らせた。
ホームで待つ乗客達の中に……セーラー服に白いカーディガンを着ている女のコの姿が見えた。
あ、いたっ。菜子だ。
思わず声が出そうになって、さりげなく口に手を当てて隠した。
アイツ、電車が来てもまだ下を向いていてスマホを見てる。
もし車両が違くなったら移動するつもりでいたけど、うまい具合に菜子のいる列の前に停車した。位置的に、俺から見て右側の扉から乗りそうだ。
……ヤバ。俺と会った時のパッとする菜子の顔が容易に浮かんで、一人でニヤつきそうになる。
そんなことを思っていたら扉が開き、降りた乗客と入れ替わるようにホームの乗客が乗り込む。
その中に菜子も混じって乗ってきた。けど、中の方にいる俺には全然気づいてない様子。
声をあげて呼ぼうとも思ったけど、降りた乗客より乗ってきた乗客の方が多くて車内が人で少し埋まったから、迷惑になることを考えてやめた。
俺から近づくか――
「あれ? おーい、菜子ちゃーんっ」
っ、え?
俺が行くよりも、誰かが先に菜子に声をかけてきた。
菜子はその声に気づき、パッと顔を明るくして「わぁー」と嬉しそうに手を振る。
え……誰だ?
菜子の視線の先を見ると――青い学ランを着た男子が、席に座ったまま手招きしていた。俺が背を向けている座席の一番右端に座ってる。
