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俊光と菜子のホントの関係

第9章 『勝手にジェラシってる』


 あの学ラン……大学の近くにある男子校の生徒だ。

 しかもよく見たら、あの男子ってもしかして――


「晃(ひかる)君! 今帰りなの?」

「そうだよ」


 やっぱり。明里ちゃんの双子の弟・晃君だ。

 同じ駅からずっと一緒に乗っておきながら、全然気づけなかったな。違うのは髪の長さだけで、あとは明里ちゃんそっくりなのに。


「こっちに座りなよ」

「うん、ありがとー」


 晃君は自分をずらして菜子を端に座らせた。


「晃君、これから真っ直ぐ帰るの?」

「いや。一つ手前の駅で降りて、友達のところに行くんだ」

「そうなんだー……あ、ところでさぁ――」


 と、ここで電車が動き出し、二人の会話はガタンゴトンという音に負けて聞こえなくなった。

 聞こえなくなっても、楽しそうな雰囲気は伝わってくる。

 それがなんか、俺を虚しくさせた。


 なんだ? この取り残された感は……。


 菜子に全然見向きもされなかったことに対して、思ってる以上にガッカリしてる自分がいた。期待に胸を膨らませていたから、余計にだ。


 確かに、俺は車両の中間にいたし、情けないことに晃君に先越されて動けなかったしで、菜子からしたら気づきにくいかもしれないけど……。にしたって、もう少し周りを見てくれても良くないか?


 俺が容易に浮かべていたパッと顔を晃君に向けて、

 更に真っ直ぐに晃君のところに行って隣に座って、

 また更に晃君にニコニコして嬉しそうに楽しそうにして……


 うわ。勝手にそう考えてしまったら、スゲーモヤモヤしてきた。


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