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俊光と菜子のホントの関係

第9章 『勝手にジェラシってる』




 ――晃君がホームへと降りていった。

 それを見届けてからもう一度菜子を盗み見ると、顔をうつむかせ、置物のように微動だにしないで座っている。


 菜子のヤツ。いつもなら『俊光君!』って飛んで来るはずなのに、一向に動こうとしないな。かといって、今までずっと晃君にベッタリだった菜子のところに俺から行くってのも、なんかシャクだし……。

 と、グルグル悶々として考えていたら、ふと顔を上げた菜子と、またバチッと目が合った。

 菜子はさっきみたいにバッと反らすことはしないで、俺とただただジーッと見合ってくる。

 これって『見つめ合ってる』っていうよりも、『睨み合ってる』と表現する方が正しそう。

 俺がつい睨んでしまうワケは重々自覚してるけど、なぜ菜子までが睨んでくるのかが意味不明だ。


 散々イチャついてるところを見せつけられた挙げ句、何で睨まれなくちゃいけないんだよっ。


 そう思うと、またイライラムカムカが湧いてきた。


 しかし、このまま強情に強情しても埒(らち)が明かなそうだな。

 こうなったら……俺から行ってやろうじゃねぇか。


 俺はゆっくりと歩いて菜子のところへ行き、さっきまで晃君が座っていた席に、今度は俺が座った。


「……よっ」

「ど、どうも……」


 声をかけるも、どこか他人行儀な菜子。

 電車はそれを見計らったかのように、ゆっくりと動き出した。


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