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俊光と菜子のホントの関係

第2章 『俺と菜子』


「お前さー、いろいろ考えすぎなとこあるよな。好きだったら、すぐにどうこうしたいって思いそうなもんなのに……そうやって人の気持ちばかり考えやがって。
 まぁ、そういう俊光だからオレも好きなんだけど。なかなかいい男のクセに天然で鈍感だし、オレみたいにチャラついてないし」

「そんなことねぇよ……」


 人のことを考えているようで、実はこれって、今ある関係が壊れるのが怖くて逃げているっていう、ただ臆病なだけのような気もするし。


「なぁ。好きと気づいたのって昨日だろ? だったらもうちょい自分の気持ちを落ち着かせてみたらどうだ? もしかしたら、ただの『兄妹愛』と混合してる可能性もあるかもしれないしな」

「え、兄妹愛?」

「そ。今は間近にいる菜子ちゃんしか見えてないだろうけど、ちょっと他の女を見たら、気持ちがそっちにいくかもしれないし。
 それでもいかなかったら、俊光の気持ちは『兄妹愛』じゃなくて『本当の恋』っつーこったな」


 本当の恋……か。

 確かに智樹の言うとおり、昨日好きだと思ったばかりだ。なのに、すぐに決定づけるのには、気が早いのかもしれない。


「そう……だよな。俺、ちょっと気持ちを落ち着かせてから、また改めて自分の気持ちと向き合ってみるよ」

「うん。かといって、無理に気持ちを変えようとすることもないんだからな。自然に身を任せた方が答えが出やすいだろうし」

「あぁ……」


 もしかしたら、また菜子に対する気持ちが兄妹に戻るかもしれない。そしたらその方がいい。菜子は俺を兄としてしか見てないんだから。高校卒業してから打ち明けたって、たぶん菜子の気持ちは変わりきれないと思うし……変わらない方がいいと思う。


 無邪気な菜子には、普通のヤツとまともな恋愛をしてもらいたい。

 というのも……本心かどうかは、自分でも定かではないけど。


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