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俊光と菜子のホントの関係

第2章 『俺と菜子』


「智樹、ありがとな。いろいろ相談にのってくれて」

「なーに、いいってことよ。いい男の言うことは、結構説得力があるだろ?」

「ははっ、自分で言うなよー」


 智樹は、自分の考えを押し付けたりしないで、俺の気持ちを汲み取りながら聞いてくれる。面白がって冷やかしたり、からかったりすることもあるけれど。

 本当……智樹がいて良かった。じゃなかったら俺は、菜子とのことを誰にも話せずに、ずっと自分の内で溜め込んで、ただひたすら悩んでいただけだった。


 話に区切りがついたところで、ガチャッ……と屋上の出入り口のドアが開いた。


 十数人ほど、屋上に上がってきた。制服のリボンの色からして、全員一年生の女子だ。


 え、何かこっちの方を見てる? と感じた瞬間――

「きゃー!」と黄色い声を発し、勢いよく駆け寄ってきた。


「え、えっ? ……うわっ!」


 女子達は、あっという間に智樹を囲んだ。と同時に俺は、女子達に『邪魔!』と言われるが如く押し出された。


「久我(くが)センパーイ! 今日、調理実習でクッキー作ったんですー。受け取って下さーい!」

「ズルーイ! 私が先よー!」

「アタシのも受け取ってくださーい!」

「あははっ。みんなー、慌てない慌てない! 順番順番!」


 智樹は慣れた様子で、殺到する女子達を宥めた。

 少し離れて、智樹のモテっぷりを眺めてみる。


 はぁー……相変わらずスゲーな、この光景。


 ドラマやマンガみたいに派手なモテ方をするヤツなんて実際いねーだろって思っていたけど……その考えは、あの智樹と出会ったことによって、見事に覆されたもんなぁ。

 人気俳優さながらの塩顔イケメンな上に、ああやって軽く気さくにみんなと接するから、あんなにモテるんだろうな。

 そういや智樹って……今まで誰かを本気で好きになったことってあるのか? 一年以上の付き合いなのに、まだ聞いたことがなければ、智樹からもそれらしい話をしてきたこともない。

 菜子を狙ってるって言うのは言うけど……でもそれは、明らかに本気じゃないのが俺でもわかる(ただ俺の反応を見て面白がってるだけだろうな)。

 うーん……ま、いいか。無理に詮索しようとしなくても。自然と聞ける時がくるまでは。何でもかんでも聞けば良き親友ってワケじゃないんだから。


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