
俊光と菜子のホントの関係
第2章 『俺と菜子』
「ありがとう。わざわざ俺にまであげようとしてくれて。でも……本当に貰っていいの?」
「は、はいっ。受け取ってもらえるならっ」
「もちろん、せっかくだから。じゃあさ、この場で早速食ってみてもいい?」
「えぇっ!? はっ……はいっ!」
そのコから丁寧にもらうと、袋からクッキーを一枚取り出して口に入れた。途端、口の中で、ちょうど良い甘さとバターの香りが、ふわりと優しく広がっていく。
「……うわ、何これ。すげーうまいじゃん! やっぱりこういう手作りっていいよな。心がこもってるし、女のコって感じがするし。
本当、ありがとな! これ、大事に食うよ」
……あれ? なんか、二人とも固まってるぞ。
「っ……きゃーーっ! どうしよーステキーッ!」
「やだぁー! 私までドキドキしちゃーうっ!」
「え? え? あっ、ちょっと! ……二人とも、行っちゃった」
ど、どうして急に逃げたんだ? なんか気に障ったか?
「俊光ぅー、お前なぁー……」
大量のクッキーを抱えた智樹が、呆れた様子で見てくる。
「智樹。今俺さ、あのコ達が逃げ出すぐらい変なことでも言ったか?」
「はぁ……そういうところだよっ」
「え?」
「さっきオレが言ったじゃん。『なかなかいい男のクセに天然で鈍感』って。
無自覚なヤツほど、タチが悪いものはない」
「そ、そんなつもりじゃ……」
「オレは一度、俊光みたいなヤツになってみてぇよ」
は? 何であんなモテモテの智樹が、モテない俺を羨ましがるんだ?
それは結局、わからずじまいだった。
