
俊光と菜子のホントの関係
第2章 『俺と菜子』
土曜日の夜。
家族四人で夕飯を食べながら、明日の予定を頭で確認する。
吉野との映画。午後一時、駅前で待ち合わせ……か。
菜子以外の女子と二人で出かけるって、中学生以来だな。
「……あらぁ。菜子ったら、どうしたの? 珍しくあんまり食べてないじゃなーい」
と、母さんが菜子に向かって、ホントに珍しそうにして声をかけた。
え……? あ、本当だ。
母さんに指摘された菜子のご飯とおかずを見ると、確かにほとんど減っていない。
へぇ、菜子にしては珍しー。いつもなら俺より早く食い終わるのに。ご飯も必ず二杯……が、おかわりすらしてないぞ。
「うん……。なんか、食欲なくって……」
俺の左隣に座る菜子は、力無くポツリと呟いた。いつも無邪気にものを言うヤツが、そんな弱々しい言い方をすると、食欲ないってのにも説得力がある。
「おいおい、大丈夫か?」
菜子の向かいに座る父さんが、愛娘を心配そうに見つめて声をかける。
「うん、大丈夫だと思う。今日の部活でハリキリ過ぎて疲れたのかも」
「そう……明日は、お父さんもお母さんも出かけるし、俊光もクラスの友達と出かけるんでしょ?」
「あ、あぁ……」
ウソは言ってない。実際そうだから。聞かれてもないのに、わざわざ『告白されたコ』と言う必要もないし。
「もーう、大丈夫だって。グッスリ寝たら、きっとすぐに良くなるよ!」
菜子は俺達に元気な素振りを見せた。
とか言って、どこか無理してるようにも見えるぞ。
「ならいいんだけど。今日は遅くまで起きてないで、早く寝なさいよ。いいわね?」
「はーい。ごちそうさまぁ」
菜子はおもむろに立ち上がり、フラフラとリビングから出ていった。
菜子のヤツ……本当に寝て良くなればいいけど。
気づけば、明日の映画のことがすっぽ抜けて、菜子の体調のことで頭がいっぱいになった。
