
俊光と菜子のホントの関係
第14章 『俊光君への兄(本命)チョコ』
「……あれ? 菜子ちゃん一人?」
晃君が辺りをキョロキョロと見回しながら訊いてきた。
「ううん。今ね、明里と他の友達と一緒に西急ハンズで買い物してたところなの。私だけ先に買い終わったから、みんなを待ってるんだー」
あえて、お買い物がバレンタインチョコだということは伏せちゃった。こういうのって、当日にサプライズであげた方が喜ぶかもだしね。
「ふーん……。
あ……あのさぁー、菜子ちゃん……?」
「なぁに?」
どうしたんだろ、晃君。急にソワソワしちゃって。トイレなら西急ハンズの中にもあるよと教えてあげようとしたけど……どうやら違うみたい。
「今度さ……その……どこか、遊びに行かない?」
「遊びに? 晃君と?」
「うん……」
あ、なーんだぁ。トイレじゃなくて遊びの誘いかぁ。
「うん、いいよ! 明里にもあとで聞いてみよ! そういえば私達って、三人で遊んだことがなかったよねー」
「あーっと、明里と三人でじゃなくてっ」
「……へ?」
「その……オレと……ふ、ふ、ふたっ、ふたぁー……」
「え、蓋(ふた)? なんの?」
「蓋じゃなくてっ、えーと……」
変な晃君。さっきからソワソワしてるし『じゃなくて』ばっかだしで……一体何が言いたいんだろ――
「……ひぃかぁるぅくぅーん、みーつけたぁー」
「っ! げっ、お前らっ……!」
「わわっ! なになにっ?」
どこからともなく現れた、晃君と同じダッフルコートを着た四人の男のコ達。
晃君を、グリグリしたりギリギリしたりしてる。絡んでるというよりは、じゃれているって感じ。
てことはつまり、この男のコ達は……
「えーと……晃君の、友達?」
「あっ、うん。まぁ、一応そうなんだ」
「おい。一応ってなんだよっ。さっきまで一緒にいると思っていたら、いきなりいなくなりやがって!
しかもっ……この『きゅるるん』としたコは誰だよっ!」
「へぇっ!?」
長めの茶髪の人が、私の方を指差して晃君に言うと、他の三人も一斉に鋭い目付きでこっちを見た。その勢いに私、ビクッと怯えちゃったよ。
ていうか、きゅるるんって何? なんかお腹の音みたいな表現だし。私って、そんなに食い意地張ってるように見えるもの? いくらポッチャリしてるからって、あんまりだよぉー。
