
俊光と菜子のホントの関係
第27章 特別編『菜子の誕生日お祝いデート(前編)』
そんな妄想は置いといて……
俊光君の言っていたとおり、降りた駅からちょっと歩いただけで、すぐに海に着いちゃった。
道路から海岸に降りて、波打ち際まで来ると、私の視界カメラは、青い空と白い雲とキラキラ光る海しか映らなくなった。……あ。あと、カッコ良く波に乗るサーファーさん達も、画の中に入り込んできた。
「すごぉーい。広くて大きくてキレー」
大パノラマに大感動していたら、
「……ほれっ」
「うひゃあっ!」
俊光君が、いきなり背中を押してきたぁ!
海の方へ体が前のめりになるも、必死に両手をジタバタと羽ばたかせて、何とかバランスを取り戻せた。危なかったぁ。ギリギリセーフだったよ。
「もうっ、何すんのよぉ! 危うく海にドッポーンするとこだったじゃん!」
「油断すんのが悪いんだろー?」
いたずらに笑う俊光君に、ムカついてきちゃったもんねーっだ!
「お返しだぁ、このぉーっ!」
「うわっ、あぶねっ!」
今度は、私が俊光君の背中を力いっぱい押してやった。でも俊光君は、ドッポーンする寸前のとこで耐えた。
「やったな、このヤローっ」
「ひゃあっ! ちょっと、ホントに入っちゃうでしょーっ!」
押したり押されたりを繰り返していくうちに、だんだんと面白くなってきて、気づいたら笑い合っていた。
妄想どおりのアハハウフフなおいかけっこをするよりも、キャッキャとハシャいで押し合いっこをしている方が、私と俊光君らしく、海のデートを楽しめている感じがする。
私、じゃんけんに勝てて、ホントに良かったぁ!
波打ち際でいいだけ遊んだ次は、手を繋いでのんびりとお散歩。さざ波のささやかな音に耳を預けて癒されていると、ふと、俊光君が立ち止まった。
「どうしたの?」
俊光君は、空いている右手を足元の方へ伸ばす。何か落としたのかな?
「菜子、見てみろよ。キレイだぞ」
「わぁ、ホントだぁ」
俊光君が砂浜から拾い上げたのは、落とし物じゃなかった。形がコロネそっくりの、パールホワイトの巻き貝。俊光君からそっと受け取って、空にかざすと……わぁ、うっすら七色に輝いてる。とってもキレイで、うっとりと見惚れちゃう。
「海に負けないぐらいキラキラしてる。こういう貝って、ホントに自然であるんだね」
「だな」
