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俊光と菜子のホントの関係

第27章 特別編『菜子の誕生日お祝いデート(前編)』


「……んふふー」

「何だよ。含み笑いして」

「だって、今日のデートが終わるまでは、俊光君をずっと独り占め出来るんだもん。嬉しくて」


 一緒になってふざけ合ったり笑い合ったりする俊光君も、プレゼントをするようにキレイな貝を拾って見せてくれる俊光君も、

 デートをしている私だけの特権だよね。


「……はぁー。お前なぁ……」

「へ、何? 呆れたの?」

「じゃなくて……あんまり可愛いことを言ってくれるなよ。
 き……キス……したくなるだろ……」

「へ……へぇーっ!?」


 俊光君が私に、キスしたくなるぅ!?

 うそぉ! ひょっとしてまだ、妄想の中だったりするのぉ!?

 確かめるべく、貝を大事に握ったままの手で、頬っぺたを一思いにつねってみた。


「っ、いだだだっ!」

「菜子っ、いきなり何してんだよっ」

「うぅ、いだい」


 でも、しっかりと現実だった。


「痛いに決まってるだろ。あーあ、少し腫れちゃってるし……」

「っ……」


 私の腫れた頬っぺたを撫でる俊光君と、顔と顔の距離が自然と近くなっちゃった。

 二人して恥ずかしくなって固まる。目も離せず見つめ合う。繋いでいる手と手も、更にぎゅっと握り合う。

 海が、私と俊光君のことを冷やかすように、波を寄せては返すを繰り返してくる。

 これはもう、言われたことを真に受けちゃってもいいんだよね?

 そんなら――


「俊光君っ。はい、どうぞっ」


 心臓をバクバクさせながら目をしっかりとつむって、俊光君に唇を差し出した。

 明るくて周りに人もいて恥ずかしいけど……俊光君となら、公開キスしてバカップル呼ばわりされても、オッケーカモンだよ!


「……菜子」


 ひゃーっ。俊光君が顔を近づけてきているのが、目を閉じていてもわかるよぉ。

 俊光君……俊光君っ――


「キャン!」

「……へぇ?」


 今の甲高い鳴き声は……もしかして、もしかしなくても……。


 突然の『キャン!』に――私は嫌な予感しかしなくて。

 怖々と目を開けてみたら……


「ひぃっ!」


 やっぱりだった。

 俊光君の足元で――コロコロとした子犬が、短いしっぽをふりふり振ってすがりついてるぅっ!


「いやぁーっ! 嫌な予感、的中だよぉーっ!」


 即、俊光君から1メートルほど離れた。


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