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俊光と菜子のホントの関係

第27章 特別編『菜子の誕生日お祝いデート(前編)』



 他にまだお客さんがいないからと、店員さんに案内された、窓際の四人がけのテーブル席。二人でゆったりと座りながら、美しい海岸の景色を横目に、ランチセットのサラダとスープを口にする。


「んんーっ。まだサラダとスープだけなのに、早くも美味しさ全開だよー」


 ……菜子、まだサラダとスープだけなのに、早くも幸せ全開だ。さっきまでグシュグシュしていたヤツとは思えないな。

 でもまぁ、確かに。菜子がそうなる気持ちもわかる。彩りのいいサラダも、ほんのり甘味もあるにんじんのポタージュスープも、すでに旨くて。もっとじっくり味わって食いたいのに、どんどん食が進んでいってしまう。

 思いがけないとこで遭遇した『めえめえ』だったけど……入ってみたら、結構いいとこだよな。

 母さんと歳が近そうな女性の店員さんは、営業的ではなく、母性溢れる優しいスマイルで迎え入れてくれたし。

 内装は、外観と同じ、白のシンプルなデザインコンクリートに、温かみのある木をセンス良く取り入れている。いつまでも居座りたくなる、アットホームな雰囲気を醸し出している。

 そして、サラダとスープだけで、この旨さ。メインで頼んだ、『釜揚げしらすピザ』と『地元の野菜たっぷりトマトソースパスタ』も、絶対に間違いなさそう。

 こういう店が身近にあったら、ちょくちょく足を運んでしまうかも。値段もリーズナブルだし。

 そういえば……この店には、あの女性の店員さんしかいないのかと思ったけど、カウンターの奥へ入っては、すぐに料理を運んでくるとこを見ると、

 料理担当の人は、別にいるみたいだな。

 こんな旨い料理を作れるなんて。一体どんな人なんだろ……。


「……ところでさぁ、俊光君?」

「っ、何だよ?」


 自分のノルマをすでに平らげた菜子が、まだスープを残している俺に話しかけてきた。

 コイツまさか、『ちょうだい』ってねだってくるんじゃないだろうな。おねだりされる前に、とっとと残りを飲みあげよう。可愛く言われたら、あげたくなくても、ついあげたくなっちゃうからな。

 カップごと持って、スープを一気に口に含んだら、


「俊光君の今日の荷物、やけに多くない?」

「ぐふっ……!」


 菜子に不意を突かれ、過剰に反応をしてしまった。

 あぶなっ。せっかくのスープを吹き出してしまうとこだったぞ。


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