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俊光と菜子のホントの関係

第27章 特別編『菜子の誕生日お祝いデート(前編)』


「んー美味しー。しらすもチーズも塩気があるのに、しょっぱくなりすぎてない。トッピングしてある大葉とも、相性ピッタリ。チーズはもちろん、生地までもちもちしていて、噛みごたえがあるよー。
 こっちのトマトソースパスタも、トマトの酸味と野菜の旨味がパスタに絡んで……んーたまんなぁーい!」


 やれやれ。荷物への不信感はどこへやらだな。目の前のピザとパスタに無我夢中でかぶりついて、ペラペラと食レポまでこなしている。

 ひとまず菜子で和んでから、俺もあとを追うようにピザをかじる。……うん、菜子の食レポどおり。やっぱり旨い。

 よく咬んで味わっていると、


「……んんっ? なははっ。俊光君、見て見てー。チーズが全然切れてなーい」

「っ……! やめろ、笑わすなって」


 コロコロ転がるように笑う菜子の口から伸びたチーズが、面白く橋渡し化している。コイツ、さっきのスープに引き続き、ピザまで吹き出させる気かよ。


「……ははっ。あのなぁ、チーズに笑ってる場合かよ。口の周り、スゲーついてる」


 チーズの橋渡し化も面白いけど。しらすやらトマトソースやらが、口についてたり塗られていたりで芸術化しているのも、なかなかだぞ。

 次々と笑わせてくれたお返しとばかりに、俺は紙ナフキンを手にして腕を伸ばし、口周りの芸術作品(汚れ)を無理矢理拭き取る。菜子は、嫌そうに顔をしかめた。


「あーんもうっ、また子供扱いしてー。自分で拭けるってばー」


 訴えられても手を止めずに、最後まで拭ききってやった。妹の口周りがキレイになると、俺は自己満足した。

 遠いとこに来たら気持ちが解放されて、もっと恋人っぽくなるんじゃないかと思っていたら……普段とあまり変わらないな。

 そりゃそうだ。物心つく以前から、俺はすでに菜子の兄で、菜子は俺の妹だったんだから。多少彼女に見えたりしても、大袈裟には変わらないか。


「ねぇねぇー、おいしーい?」


 そう。この小さい女の子ぐらいの歳の頃から、俺は菜子の……

 は? 女の子!?

 思わず二度見。

 驚いた。いつの間にテーブルのそばに?

 どこから現れた? まさかこの子、俺にしか見えてないってことはないよな?

 当然、そんなことはなく。菜子も突然の女の子に、目を白黒させている。


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