
俊光と菜子のホントの関係
第27章 特別編『菜子の誕生日お祝いデート(前編)』
「どうもすみませんねぇー。うちの娘がお邪魔したみたいで」
「あ、いえ」
「あのぉー……女の子のパパさんは、ここの店長さんでもあるんですか?」
「そう。コイツの父親兼、ここの店長と料理担当」
菜子が訊くと、気さくに答えてくれた。
こんな男前でワイルドなサーファーみたいな人が、こんな旨い料理を作ってるんだ。
「美味しいと褒めてくれたみたいで、どうもありがとう。ここに来るの、初めてでしょ?」
「初めてですし、さっきたまたま見かけて知ったばかりなんです」
今度は店長さんから訊いてきたのを、俺が答えた。
「だろうね。この店のお客さんは、地元の人が主だからさ。一目でよそから来た人だってわかるよ。
しかし、ずいぶんと若いお客さんだね。二人とも、学生?」
「はい。大学生と、高校生で……」
「んんー?」
「な……なんですか?」
店長さんが、何の前触れもなく目を細め、俺の顔をじーっとガン見する。
その目力がやたら強くて、怖くて、緊張させられる。な、なんだコレ。睨まれてるのか?
「お兄さん、誰かに似てるんだよなぁー……」
更にボソッと呟かれる。
「えっ……? 俺が、ですか?」
「うん。誰だっけなぁー…………っ、あーっ! そうだそうだ、思い出した!」
「な……何っ?」
記憶を引き出せたのか、途端にスッキリとした顔となり、
「お兄さん――オレの元カノに似てるんだ!」
「は……はぁーっ!?」
店長さんは、女の子とタメを張るぐらいの大きな声で、女の子よりもとんでもないことを店内中に響かせた。
「も、元カノに似てるって……俺、男なんですけどっ!」
初対面の大人相手でも、その発言にはさすがに大人しくいられねぇぞ。俺は怖さも忘れて、若干キレ気味に言い返した。
「いや、男なのはわかってるんだけど、でも似てるんだって。その、キレイに整った顔立ちが。横を向いた時のスッとしたEラインまでも、そっくり!」
「なっ、なっ……」
この人、本当に店長か? 初対面の客に(しかも男に)向かって『元カノとそっくり』だなんて、思っていても普通言わないだろ。ムカつくを通り越して、信じられないという気持ちでいっぱいだぞ。
一緒に聞いていた菜子も、呆気に取られている。
