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俊光と菜子のホントの関係

第27章 特別編『菜子の誕生日お祝いデート(前編)』


「はいはいっ。いつまでもお客さんの食事の邪魔をしてないで、そろそろ持ち場に戻ってよっ。常連さん達がもうすぐ来る時間よ。
 それに、『子供達』も今日は午前中で帰って来るんだからねっ」

「……子供達?」


 子供って、この女の子だけじゃないのか?

 俺が疑問を持ったことに気づいたのか、奥さんでもある店員さんが、こっちに顔を向けた。


「あ。うちね、実は……この子含めて、娘が五人いるんですよー。いわゆる、『五人姉妹』でして」

「ご……五人姉妹っ!?」


 俺と菜子は同時に驚いた。

 謙虚に教えてくれたけど……子供の人数と内容が、全然謙虚じゃない。二人兄妹の俺達からしたら、『五人姉妹』というフレーズには、かなり圧倒される。


「ただいまぁー!」


 ドアについているベルの『カランコロン』という音と共に、複数の賑やかな声が中に入ってきた。それだけで店の雰囲気が、一気に明るくなった気がした。


「おっ、噂をすれば帰ってきたぞ」


 と言う、店長さんの視線の先には――

 革の学生鞄を持つ、ボレロの制服姿の子。と、その後ろに、ランドセルを背負った子が二人と、ブレザーの通園服を着た子が一人。計・四人の女の子達が、そこにいた。


「もしかして……あの子達が、噂の子供達ですか?」


 菜子が目をまん丸くして訊いたら、店長さんと店員さんが、はにかんで頷いた。

 店長さん夫婦の子供達って、あの小さい女の子だけじゃなくて、他の子もまだあどけない年齢だったのか。ボレロの制服を着ている子は中学生だろうけど、まだ幼さが残る顔をしている。

 まぁ……高校生になっても、いまだに幼さが残りまくりのヤツもいるけどな。と、菜子にバレないようにチラ見をしては、クスッと小さく笑いを漏らした。


「おねえちゃんたち、おかえりなさーい!」


 女の子が、待ってましたと云わんばかりに、店長さんと店員さんの間をすり抜けて、タタタッと走っていく。


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