
俊光と菜子のホントの関係
第27章 特別編『菜子の誕生日お祝いデート(前編)』
「あとですね、『めえめえ』というお店の名前は……何を隠そう、この一番下のいつちゃんが付けたんですよ!」
「あ、そうだったんだ」
どうりで。変わった名前だと思ったら……。子供が名付け親だとわかると、菜子の言うとおり『可愛い名前』と思えてきて、親しみまで沸いてくる。
「それってやっぱり……羊だからなの?」
菜子がそっと尋ねると、名付け親だと言われた一番下の女の子が、ううんと首を横に振った。
「あのねー、『ヤギさん』の、めえめえなのー」
「ヤギさん?」
聞き返す菜子に、女の子がコクリと頷くと、
「はい。うち、名字が『ヤギ』って言うんです。とはいえ漢字は、動物の『山羊』ではなくて、漢数字の『八』に、普通の『木』で、『八木』なんですけどね」と、更に細かく説明をしてくれたのはやっぱり、中学生の子だった。
「へぇー。メリーさんとこの『羊』じゃなくて、八木さんとこの『ヤギ』だったんだー。なるほどー、謎が解けたねっ!」
「あぁ、そうだな」
菜子は素直に納得し、俺に笑いかける。五人姉妹に負けず劣らずの、天使の笑顔。ジロジロ見られている中では、あんまり顔を緩ませられないから、ポーカーフェイスを保つけど。
