
俊光と菜子のホントの関係
第27章 特別編『菜子の誕生日お祝いデート(前編)』
「おっ? その反応は、ご名答ってヤツかー。いやぁ、オレのオッパイの目利き力、アラフィフになっても健在だなー……っ、いででででっ!」
うわ。店長さん、また耳引っ張られてる。
「はいっ、セクハラー。それがね、女性の一見さんが一見さんで終わっちゃうことが多い原因なのよー。おわかりですかぁ、店・長・さん?」
「はい、よーくわかっておりますー……」
「だからあなたはこれからも、常連さんの時以外はあんまり表に出ないで下さいねー。裏で大人しく、店長らしく、美味しいお料理を作っていて下さいねー」
「はい、よーくわかりましたぁー」
……初めて会ったばかりの俺でも、すごくよくわかる。店長さんは、この奥さんじゃないとダメだってことが。
「はぁーあ、そうかぁー。私もお姉さんみたいにオッパイが大きかったら良かったなぁ。したら、お兄さんの妹になれたかもなのにー」と、中学生の子が残念そうにする。
いや。俺はオッパ……もとい、胸の大きさで妹を決めているわけではないんだよ。
「一紗までバカなことを言ってないで、みんなと奥へ行ってちょうだい。お昼ご飯、パパと一緒に用意してあげるから」
「えー。ママぁー、私達、お兄さんとお姉さんと食べたーい」
「ダメよっ。これ以上お客さんの邪魔をするなんてっ」
「じゃあ、食べ終わってからならいいでしょー?」
「いい加減にしてっ。早く行きなさいっ」
「はぁーい。お兄さん、お姉さん、じゃあねー」
「あぁ……じゃあね」
静かになった。
再び、テーブル席で二人きりに。
「…………」
あの一家(主に、店長さんと一番上の子。プラス、一番下の子)に、何かといじられたせいか、気恥ずかしい。
でも……
(このお兄ちゃんは、私のお兄ちゃんなのっ! かけがえのない、大事な大事なお兄ちゃんなのっ!)
「……菜子。ここに来いよ」
と、菜子を誘いつつ、パンパンのトートバッグを向かいの席の椅子に置き、隣の席を空ける。俺の行動に、菜子はキョトン。
「家みたいに、並んで座って食おうぜ」
「俊光君……」
「嫌か?」
「……ううんっ。私もそうしたいっ」
菜子は嬉しそうにちょこちょこと歩み寄り、俺の左隣にちょこんと座った。
「えへへー、いただきまーす」
「うん、いただきます」
