
俊光と菜子のホントの関係
第28章 特別編『菜子の誕生日お祝いデート(後編)』
「俊光君の、嘘つきぃー!」
あったまにきて、ロビーの中心で叫んでやった。
「待てっ、俺の何が嘘つきなんだよっ」
「浴衣だよぉっ、ゆ・か・たっ! 『俺には絶対似合いますぇーん』言って嫌がっておきながら、他の誰よりも、ものすごぉーく似合っちゃってるじゃん!」
「んなわけねぇだろっ! ていうか俺は、『似合いますぇーん』なんて、そこまでアホっぽく言ってねえぞ!」
「うるさぁいっ! 俊光君のどバカ天然っ!」
「あのなぁっ……どバカ天然も、浴衣がめちゃくちゃ似合ってんのも、お前の方だっつーのっ」
「っ……へぇっ?」
「綺麗な百合柄の浴衣を、愛らしく着こなしやがって。風呂上がりに髪をアップしてまとめてるのだって、い……色っぽいしっ……」
「と……俊光君……」
私にだけ聞こえるようにボソボソと言う俊光君の顔、お風呂上がりのあと以上に赤くなってる。
ひゃーっ。私もつられて赤くなっちゃうっ。
「…………」
「…………」
ちょっとだけ無言モードのあと、俊光君はソファーからすくっと立ち上がって、私の手を取った。
「……行こう」
「あっ……」
歩きだす俊光君の手、熱い。私も、熱い。
嫌じゃない。決して嫌じゃないんだけど……恥ずかしい気持ちのままで部屋に戻ったら、ちょっと気まずい気がする。
あんなにオーマイガーに対してオッケーカモンだったのに、カッコ良すぎる俊光君を見たら、一緒にいるだけで緊張してきちゃった。どうしたらいいのか、わからなくなってきちゃったよぉ。
部屋に戻る前に、何かで気を紛らわさないと、私……心の臓をバクバク使いすぎて、くたばっちゃうかも。
したら、通りかかりに、テーブルみたいな青色の台が目について、私はピーンときた。
