
俊光と菜子のホントの関係
第28章 特別編『菜子の誕生日お祝いデート(後編)』
「はいっ。おかげさまで、すっごく楽しく過ごせてますっ。ありがとうございますっ」
「ふふふ、それは何よりでございます」
私が答えると、若女将さんはふんわりと笑みを浮かべた。
……若女将さんって、朝から晩まで働いているかもなのに、全然疲れている風に見えないよね。キレイな着物も、かっちりまとめた髪も、ちっとも乱れていない。スゴいなぁー。さすがプロだなぁ。
そういえば、あの『めえめえ』の店員さんもそうだった。私達が帰る前の時、すごくバタバタで忙しそうだったのに、お客さんには常に温かいスマイルを向けてた。
人と接するお仕事をしている女性って、お客様への笑顔とさりげない心配りが、とても素敵だと思うし憧れちゃうけど。ちょっとでも疲れたりすると、顔や態度にすぐ出ちゃう私には、きっと向かないかもだよね。
でも……いいなぁー。
「あの……もしよろしければ、只今のお時間、庭園をライトアップしておりますので。夜のお散歩がてら、そちらの方もご覧になられてみてはいかがでしょうか?」
「へぇっ、ライトアップ!?」
私が羨望の眼差しで見ていたからなのかどうかは分からないけど、若女将さんが、とっても心惹かれる提案をしてくれた。
「……せっかくだから、行ってみるか?」
「うんっ、行く行くっ! 行ってみたい!」
二人で浴衣を着て、夜の庭園をお散歩なんて。そんなの、絶対ロマンチックしかないじゃん! もう歩けないとソファーでグッタリしていたのに、もう歩けちゃうぐらい元気が出てきちゃったよ。
二人で若女将さんにお礼を言うと、私は早く早くと俊光君を引っ張って、庭園の方へと歩きだした。
