
俊光と菜子のホントの関係
第28章 特別編『菜子の誕生日お祝いデート(後編)』
「う……うぐっ……ひっく……」
悲しいよぉ、辛いよぉ、切ないよぉ。思いっきり泣きたい。けど、耐えなくちゃ。昨日も、朝に弱い俊光君を無理矢理叩き起こしたのに、今日も同じ時間に起こちゃったりしたら、激おこぷんぷん丸どころか、お母さんみたいに恐ろしい鬼と化しちゃう。
「……俊光君、ホントにホントにごめんなさい。次こそは絶対絶対眠ったりしないから。天にも地にも誓うよ。
だから……だからどうか、私のこと、嫌いになったりしないでぇー……」
俊光君を起こしたくないけど、どうしても口にせずにはいられなくなって、なるたけ小声でポツポツと吐き出した。したら、悲しみがだんだんと我慢出来なくなってきて、とうとう涙までボロボロと溢れだしちゃった。と、
「……菜子、おはよ」
「ぐすっ、おはよぉ……」
へぇっ?
「とっ、俊光君っ!?」
ビックリした! こっちに体を向けていて、お目々もパッチリ開いてる!
「え、もしかして、もしかしなくても、起こしちゃった?」
「あぁ。お前の苦しそうな啜り泣きで目が覚めた」
「あ……そう、デスカ……」
とことん申し訳なさすぎて、体がしゅるるるる……と小さくなっていっちゃうよ。
「よく食べてよく遊んでよく寝るって。元気な子供の生活リズムかっての」
「うう……」
おっしゃる通りでござります。返す言葉もござりません。
いつまで経っても『お子ちゃま』から抜け出せない。俊光君の恋人にも全然なりきれない。
こんなんじゃあ、例え俊光君に愛想を尽かされて、元の兄妹だけの関係に戻されちゃったとしても、仕方ないよね……。
「でも俺は、お前のそういうとこが、昔から可愛くて……
好きだよ」
俊光君っ……。
「まぁ正直……寝落ちされてもこれっぽっちもガッカリしなかったと言ったら、嘘になるけど。だからって、嫌いになるとか、ないから」
「うっ……うわぁーんっ」
ぼろ泣きしながら、横になってる俊光君に飛びついて、首に巻き付いた。俊光君も、飛びついた私に腕を回して応えてくれた。
俊光君ってば、どこまでも優しすぎるんだから。感激の涙もお鼻のズビズビも止められなくて、逆に困っちゃうよ。
