
俊光と菜子のホントの関係
第4章 『私と俊光君』
中学の放課後、私は今、陽気にTボウキで床を掃いているんだー。
「ふんふんふーん、ふふふふふーん」
普段はつまんない教室のお掃除も、楽しく感じちゃう。
「菜子ったら、ずーっと鼻歌歌ってるー」
同じ当番の明里が、クスクス笑いながら言ってきた。
「鼻歌歌っちゃうぐらい、幸せなんだもーん」
「ふーん。胸が大きくなったから、てっきり落ち込んでるかと思ったのに。これもお兄様が優しいおかげなのねー」
「そうなんだよぉー」
ぐいっ!
「っ、いったぁー!」
誰っ!? せっかく俊光君のことで幸せ気分に浸っていたのに、お下げを引っ張ってくるのはっ!
ていうか、一人しかいないけどっ!
「へへーん、頭悪そうに歌ってんじゃねぇーよっ!」
「もーうっ、山田ぁー!」
やっぱりコイツだしっ!
同じクラスの悪ガキ坊主。中学から一緒になったばかりなのに、何かと私にケンカを吹っ掛けてくる超ムカつくヤツ!
「いつまでも兄ちゃんにベッタリだしよー。このブラコン」
「そのセリフ、あんたにそっくりそのままお返ししますぅー。あんたって、何かあるとすぐに『兄ちゃんに言いつけてやるー』だもん。
それに、私はブラコンで結構です。他人の山田なんかより、実の兄の俊光君の方がよーっぽどいい男だもん」
「なんだとぉ? この牛女っ! 乳ばっかデカくなりやがってよー……いってっ!」
ふん。Tボウキで背中を叩いてやった。
「てめぇーっ、兄ちゃんに言いつけてやるぞっ!」
ほら出た。ブラコン山田が。
その脅し文句は何度も言われてきたけど、ホントに山田のお兄ちゃんが私の前に現れたことは、一度もないんですけどー。
「つべこべ言ってないで、早く掃除したらぁ?」
「……ふんっ」
「山田のヤツ、やっと行ったよぉー」
……ん? 明里ってば、何ニヤニヤしてんだろ?
「ねぇ。山田ってさぁー、もしかして……
菜子のことが好きなんじゃないのぉ?」
「えーっ!? やだぁーないないっ!」
全否定もんだよ、そんなのーっ!
もう、明里ってば! とんでもないこと言うーっ!
