テキストサイズ

たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―

第1章 杉並実果留


 *


 ――二週間前の放課後。


「あのっ! すみませんっ!」

「…………ん?」


 ホームに降りたと同時に、横から声がした。

 歩こうとした足を止めて声の方を向くと、そこには一人のメガネ男子が。緊張した様子でこっちをジッと見ている。


 何気なく、辺りをキョロキョロと見渡してみる。


 他の乗客達は、その男子を気にもせずにさっそうと通り過ぎていく。その男子も、他の乗客達には見向きもしなかった。


 ……うん。間違いなく、私に用っぽい。


 けど一応確認するために、「私?」と、自分に指を差して訊いてみた。


「……はい」


 やっぱりそうだった。にしても、何の用だろう?


「で、何?」


 私が聞き返すと顔が赤くなり「あ、えっと……そのっ……」と、口ごもらせる。


 うーん、何だろ?

 ……あれ? このブレザー、うちの高校の最寄駅から二つ先にある男子校だ。レベル高いんだよねー、あそこ。実際この人も、見るからに頭が良さそうだし。

 しかも、背たっかいなぁー。170センチの武ばっか見てるから、余計に大きく見える。大人しそうな顔をしているけど、世間のイケメン・メガネ男子の部類に入ると思う。

 ていうか、この人まだ言わないなぁ。どうしよ……。

 まぁ……悪い人には見えないから、とりあえずちゃんと言ってくるまで待ってみようか。


 その男子が何かを言いだすのを待ち続けていると、次第にホームからは乗客達が減っていき、とうとう二人きりに近い状況になった。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ