
たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―
第2章 佐倉武
「実果留と言えばさぁ……朝、あのコが泣きながら走っていったのが、窓から見えたんだけど……ケンカでもした?」
実果留母はそう訊きながら、コップに水を注ぎ足して差し出してくれた。
俺はそれを受け取るも、すぐに飲まないで視線を置いた。
「……俺が、実果留を傷つけたんだよ。夕崎のこと好きじゃないのに、つき合ったりしてる実果留にイラついて、ヒドいことを言って……」
と答えてから水を一口だけ含み、ゴックンと飲んだ。朝のことを思い出すと、少量の水さえも飲みづらく感じた。
「……なるほどね。そういうことかー」
「ごめん。娘を泣かせて……」
「まぁ、あんたの気持ちもわかるしね。私も、何であのメガネ男子とつき合ったりしてるのかなぁって思うよ?
けど、あのコの中で何かあってしてることだろうし、軽い気持ちで遊んでるとかじゃなさそうだから……とりあえず、私は様子見してんだけどねー」
無関心そうに言って聞こえるけど、実果留母の娘を信用している気持ちが感じとれた。
「実果留母って、理解あるよな」
「ふふっ。実果留のしてることなんて、私からしたらお子ちゃまお子ちゃまー。
私なんて実果留ぐらいの時、四股してたんだからぁー」
「げっ。マジかよっ」
「そーよぉ。四人も相手をしてたから、アッチの方も息つく暇もなかったぐらい忙しくって。あははっ」
うげ。すっげー下ネタを暴露ってるしっ。そんなことをサラリと言うかぁ? 普通……。
「ちょっとー、そんなに引かないでよ。今はパパ一筋なんだし。それに、そういう経験があったから、こうして小説にも生かせてるんじゃないのー」
……実果留が100パー母似じゃなくて良かった……。
四股は見習いたくねぇけど、俺もこの実果留母みたいに、実果留のことを理解しようとしていたら、あんなこと言わなかっただろうにな……。
こんな俺だから、実果留が夕崎に目が行ってしまうのは、無理もない話か……。
ボンヤリとしかかると、持っていたおかゆの器を実果留母がそうっと取り、テーブルの上に置いてくれた。
