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たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―

第3章 杉並実果留 





 なるべく音を立てないように、ドアをそうっと開けた。


「お邪魔しまーす……」


 声も潜めながら、薄暗い部屋の中を伺うと――

 ベッドに横たわる、武の姿が。


 掛け布団をアゴの下までスッポリと覆っていて、お行儀よく寝息をスースーとたてている。

 武があんなキレイに布団を被っているわけがないから、武ママが掛け直したってのがすぐにわかった。


 私は完全に部屋に入り、ドアをそうっと閉めた。

 スクールバッグを机の上に置かせてもらってから、朝みたいに椅子を引っ張ってベッドのそばに座った。


 改めて、武の左側から顔をジッと見つめた。


 武……。


 武ママの言うとおり、まだ熱はありそう。顔が赤くて、汗も少しにじんでる。


 武のことだから、ちょっと触ったぐらいじゃ起きないよね?

 私は、武のおでこにふわっと触れた。


 …………うん。朝よりかはマシかも。


 案の定、武は全然気づく様子もなかった。


 そういうところ、昔から変わらない。一回寝たら、なかなか起きない。起きても、しばらくは寝ぼけているし。


 そんなんだから隙だらけになって、

 私に……

 キス……されちゃったんだよ?


 武は知らないけど、

 私のファーストキスの相手は――武なんだよ?


 そして、たぶん……

 武のファーストキスの相手も――私。


 おでこから頭に向かって、武を優しく撫でると……

 胸がきゅんとした。



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