テキストサイズ

たけるとみかる―双子みたいな幼なじみ―

第3章 杉並実果留 



 *


 ――小学六年生。


「……あれ?」


 机に向かって本を夢中で読んでいたら、武の声が聞こえなくなった。

 部屋を見渡すと――


「あーっ。また私のベッドで寝てるしーっ」


 マンガを片手に握ったまま、仰向けで寝てるー。


「気持ち良さそうに眠りやがって……このやろうっ」


 と、武のほっぺを軽くつねった。


「……ぷっ。やだー、全然起きなーい」


 もうちょっと力を入れてみよーっと。

 さっきよりも、ギュッとしてつねった。

 なのに――


「……うーん……ムニャムニャ……」


 と、言うだけ。


 えー!? まだ起きないのぉー!?


 ぷぷぷっ! いけなーい! 笑っちゃいそー!


 口を抑えて、笑うのを必死でガマンした。


「マンガも持ったままだし。しょうがないなぁー……」


 武の手を開かして、マンガをそっと離した。


 ……わ。


 開いたページが、ちょうどキスシーンだ。


 この恋愛マンガ、キスシーンが多くて、読むたびにドキドキしちゃうんだよねー。

 武のやつ。恋愛話に興味ないくせに、こんなの読んだりするから眠っちゃうんだよ。


 こんなの……あ。


 今……変なことを思いついちゃった。


 武、つねっても起きないなら……


 もしかして、キスしても……起きなかったりするかな?


 私は、マンガのキスシーンから、武に目を向けた。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ