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マックの女

第2章 ファーストフード店マクド鳴門にて

「お客様、アイスコーヒーでよろしいでしょうか? 」
 その声で、誠一は我に返って正面を見た。女はカウンターの向こうで大きな目を広げて笑顔で誠一を見つめていた。なんて爽やかな笑顔なんだろう。そう思った誠一は唾を飲み込んだ。こんな清楚な女性になんて淫らな妄想を描いてしまったのか。そう自責の念にとらわれた誠一はすまなそうに思った。気持ちを新たにして、誠一も笑顔で女に答えた。
「ああ…… そう…… アイスコーヒーをお願いします…… 」
 女は端末のボタンを人差し指で軽快にタッピングしている。なんて、かわいらしい子なんだろう。誠一は本当に妄想をしてしまった事を悔いた。
「あ…… お会計は150円でございます……」
 誠一はカードをスキャナーの上に置いて支払いを済ませて、女からアイスコーヒーを受け取ろうとした。笑顔の女は誠一に差し出したコーヒーカップを掴んだまま顔を誠一に向けた。誠一もどうしたかと思いながら女の顔を見つめた。女から笑顔が消えて、怖い顔をした女に豹変していた。
「おにいさん…… ひょっとして…… 変なこと考えていませんでしたか? 」
 女店員が誠一の手首をいつの間にか掴んでいた。女の手が汗で湿っているようだ。わずかに震えているように感じる。握る力が強くなった。誠一にはいつもの嫌な予感がした。 
「……変なことなんて考えていないよ、君の気のせいさ……」
「……あたしの勘違いだって言うの?…… おにいさん…… 変なこと、絶対…… 考えていました…… 間違いありません。わたしのおまんこが、感じたんです。わたし、超能力者なんです…… テレパシストなんです…… 」
「エエエ? 何それ? テレパ? 何それ? 意味分かんないよ…… とにかく、僕は変なことは考えていない……きみ…… 考えてないってば…… 」

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