
幸せな報復
第25章 御手洗貞子
宗男から沢子母娘の救出計画を聞かされた貞子は、半信半疑ながらも、二人を匿う覚悟を決めた。
「宗男さんの愛する家族を、わたしも守ってあげるわ。でも、海星に嗅ぎつけられたら……わたしはどうなるの?」
優しい笑顔を見せていた宗男が、いつの間にか険しい顔つきをするようになった。その変化に、貞子は事態の深刻さを感じずにはいられなかった。
「沢子さんの家族四人は、海星に殺されたっていうの? ……わたしは総次郎さんの妻とはいえ、何をされるか分からないわ」
七年前の深夜。
海星邸から脱出してきた沢子母娘と初めて対面したとき、貞子は、それまで宗男から聞かされていた話が決して嘘ではなかったことを思い知らされた。
男物のジャケットを羽織った沢子は、靴さえ履いていなかった。娘を胸に抱え、裸足のまま逃げてきたのだ。
そんな痛々しい姿を目にしながらも、貞子は思わず彼女の美しさに目を奪われた。
「何なの……この美しさは?」
監禁され、自由を奪われていたとは思えないほど、沢子の身体は均整が取れていた。
みずみずしい肌。ふくよかに見える体つきには無駄な贅肉がなく、まろやかな曲線の中に、けだもの族特有の強靭さが感じられた。
貞子は店で何人もの女を見てきた。美しい女も、妖艶な女も、決して珍しくはない。
だが、沢子の美しさは、それまで見てきた女たちとは違っていた。
その腕に抱かれているのは、まだ乳飲み子の娘だった。
貞子は、宗男から聞かされていた話を思い出した。
海星邸に監禁されていた沢子に、宗男は毎日食事を運んでいたという。
「宗男さんが、この人に惹かれたのも……無理はないのかもしれないわね」
だが、貞子の胸に浮かんだのは、そんな感想だけではなかった。
沢子は、娘を抱えたまま、何十分も走って逃げてきたのだ。
狭い座敷牢に閉じ込められ、自由に身体を動かすこともできなかったはずなのに。
それでも、いざというときには、持てる力を発揮して逃げ切る。
それが、けだもの族という種族なのだ。
人間とは異なる、強靭な肉体。
「宗男さんの愛する家族を、わたしも守ってあげるわ。でも、海星に嗅ぎつけられたら……わたしはどうなるの?」
優しい笑顔を見せていた宗男が、いつの間にか険しい顔つきをするようになった。その変化に、貞子は事態の深刻さを感じずにはいられなかった。
「沢子さんの家族四人は、海星に殺されたっていうの? ……わたしは総次郎さんの妻とはいえ、何をされるか分からないわ」
七年前の深夜。
海星邸から脱出してきた沢子母娘と初めて対面したとき、貞子は、それまで宗男から聞かされていた話が決して嘘ではなかったことを思い知らされた。
男物のジャケットを羽織った沢子は、靴さえ履いていなかった。娘を胸に抱え、裸足のまま逃げてきたのだ。
そんな痛々しい姿を目にしながらも、貞子は思わず彼女の美しさに目を奪われた。
「何なの……この美しさは?」
監禁され、自由を奪われていたとは思えないほど、沢子の身体は均整が取れていた。
みずみずしい肌。ふくよかに見える体つきには無駄な贅肉がなく、まろやかな曲線の中に、けだもの族特有の強靭さが感じられた。
貞子は店で何人もの女を見てきた。美しい女も、妖艶な女も、決して珍しくはない。
だが、沢子の美しさは、それまで見てきた女たちとは違っていた。
その腕に抱かれているのは、まだ乳飲み子の娘だった。
貞子は、宗男から聞かされていた話を思い出した。
海星邸に監禁されていた沢子に、宗男は毎日食事を運んでいたという。
「宗男さんが、この人に惹かれたのも……無理はないのかもしれないわね」
だが、貞子の胸に浮かんだのは、そんな感想だけではなかった。
沢子は、娘を抱えたまま、何十分も走って逃げてきたのだ。
狭い座敷牢に閉じ込められ、自由に身体を動かすこともできなかったはずなのに。
それでも、いざというときには、持てる力を発揮して逃げ切る。
それが、けだもの族という種族なのだ。
人間とは異なる、強靭な肉体。

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