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幸せな報復

第25章 御手洗貞子

 貞子は、目の前にいる女性が、そんな特別な力を受け継ぐ種族なのだと改めて認識した。

「えぇ……現実の話だったのね……」

 しかし、そんな特殊な能力を持つ女性でさえ、数カ月もの間、座敷牢に閉じ込められ、海星の慰み者にされていた。

 その事実に、貞子は改めて恐怖を覚えた。

「息をするように人を殺す男……。沢子さんが美人だったから、殺されずに済んだ。そうして、家に監禁して、自分の快楽のために利用していた……」

 貞子は、声を震わせながら吐き捨てた。

「あいつは……底なしの外道だわ」

 それまで噂でしか知らなかった海星という男が、今や貞子にとって、決して関わってはならない恐ろしい存在となっていた。

 あの緊迫した脱出劇から、七年余りが過ぎた。

 沢子母娘を屋敷に匿って以来、二人は海星の追及に怯えながら、隠遁生活を送ってきた。

 幸いにも、これまで海星たちの追及を免れることができた。

 しかし、この先も二人は屋敷から出ることなく、隠れて暮らさなければならないのだろうか。

 貞子は、母娘の境遇をずっと気にかけていた。

 中でも、最も心配だったのは、沢子の娘・義美の将来だった。

 義美がまだ乳飲み子だった頃、貞子は、母の愛情を一身に受けて育っていく姿を微笑ましく見守っていた。

 やがて義美は言葉を覚え、よちよち歩きを始めた。

 そして今、少女へと成長しつつある。

 その姿を目にするたび、貞子の胸には不安が募っていった。

「この子は……いつまで、こんな暮らしを続けなければならないの?」

 母親の沢子は、海星から逃げるために、すべてを捨てて生きてきた。

 だが、義美には、まだ何も分からない。

 これから成長していけば、外の世界を知りたいと思うだろう。

 友達を作りたいと思うだろう。

 そんな当たり前の願いさえ、この屋敷の中だけでは叶えられないかもしれない。

 貞子は、義美の将来を思うと、胸が締めつけられるような気持ちになった。

「この子には、いつか自由に生きられる日を送らせたい……」

 宗男が話してくれた海星邸救出計画から7年。

 沢子母娘をこの屋敷からも出させてあげたい。

 だが、海星はそんなに簡単に二人を手放す男ではない。

 貞子は、期待と不安の入り混じった思いを胸に、7歳になった義美が中庭で遊ぶ姿を見つめていた。

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