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幸せな報復

第25章 御手洗貞子

 しかし、宗男が逮捕されることはなかった。

 あの客の言っていたことが本当だったのかどうか、貞子には確かめようがなかった。

「あの子、そんなに喧嘩が強かったかしら……」

 貞子はふと、そんな疑問を抱いた。

 宗男が以前から、殴ったり蹴ったりするような喧嘩をしていたという話を聞いたことはない。

 それに、宗男自身の顔や体に、殴り合いをしたような痣を見たこともなかった。

 相変わらず、顔だけは傷ひとつない。

 ――あの子が、本当にそんなことをしたのかしら?

 そう思う一方で、海星なら宗男に何か悪知恵を授けて、警察沙汰にならないよう手を回した可能性もある。

 海星のいるところには、いつも宗男がいる。

 そんな印象が周囲に定着し、人々は宗男にも一歩距離を置いて接するようになっていった。

 このままでは、宗男まで海星に取り込まれてしまうかもしれない。

 貞子は、そんな不安を拭い去ることができなかった。

 それが、七年前のことだった。

 ――そして今。

 海星を兄貴分として慕っていたはずの宗男は、愛する沢子を助けるために海星を裏切った。

 沢子を連れ出し、さらに貞子を頼って、沢子母娘とともに逃げてきたのだ。

 貞子は、宗男に頼られたことが嬉しかった。

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