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幸せな報復

第25章 御手洗貞子

 海星に染まりきってしまう前に、宗男は戻ってきてくれた。

 これから少しずつ、以前の優しい宗男に戻ってくれればいい。

 そう思っていた。

 そして、以前の宗男なら、沢子母娘をきっと支えてくれる。

 貞子は、そう信じていた。

 だが――。

「あれは……宗男の演技だったのか?」

 ふと、そんな疑念が頭をよぎった。

 貞子の脳裏に、過去七年間の宗男の姿が次々と浮かんでくる。

 沢子母娘を助けるために、何もせず海星のそばにいた七年間。

 海星の側近のように振る舞い、周囲から恐れられていた七年間。

 そして、貞子がそれを「宗男が海星に染まってしまった証拠」だと思い込んでいた七年間。

 もし、それらすべてが――。

 あの事件の翌日のことだった。

「貞子姉さん」

 宗男は静かな声で言った。

「俺は沢子を守るよ。絶対に」

 貞子は黙って宗男を見つめた。

「でも、海星の目をごまかすためには、しばらく今までどおりにしておくしかないと思う」

「今までどおり……?」

「ああ。明日も『逢瀬』に出勤する。何もなかったような顔をして、平静を装うよ」

 その言葉を聞いたとき、貞子は納得した。

 目の前には、恐怖に震える沢子がいた。

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