偉大な魔道士様に騙されて体を捧げることになりました
第2章 魔力の回復方法
「か、からかわないでくださいませっ
…それで本題なのですが、私の家族を救える方法というのは」
「…そうだね」
頬の赤みを隠すようにコホン、と咳払いして問いかける。
魔道士はティーテーブルの上に肘を着いて、私の顔を覗き込みながら言った。
「実は最近、厄介な仕事を要求されてその中で大幅に魔力を失ってしまったんだ」
「まぁ」
(偉大な魔道士様が大幅に魔力を失うなんて…)
どれほど危険な仕事だったんだろう、驚きのあまり反射で口元を両手で覆った。
それを見て魔道士の顔がまた柔らかく綻ぶ
「そんなに大事ではないんだけど、まだ回復しきれてない時に令嬢のご家族を治癒してその後仕事に向かうとしたら…ほぼ魔力を使い果たしてしまうことになるんだ」
「そんなっ…もし他国に知られたら大変なことになりますよ」
王国唯一の魔法使いが魔力を使い果たしてしまうなんて、国の一大事だ。
もし、この事が他国に知られでもすれば近郊は保たれなくなり争いに発展するかもしれない。それは非常にまずい。
「だからこれは、僕と令嬢2人だけの秘密だ。
もし魔力回復を手伝ってくれたら、明日の仕事をずらして令嬢のご家族を助けに行こう。そしてこの事は僕が自発的に行ったことにしてあげる。
そうすれば罪にはならないだろう?」
魔道士はしー、と長い人差し指を唇にあてて秘密ということを強調した。
(なんて、慈悲深い方なのだろう…)
身勝手な私欲のために館まで押しかけ、断られたにも関わらず泣いてすがる私にこんなにも情けをかけてくれるとは
魔道士は神様なのかもしれない。
否、実際に私にとっては神様だ。