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「好きです。付き合ってください」

第9章 創作「好きです。付き合ってください」

「月が綺麗ですね」
「うあぁあぁっっ!!??」

突然、後ろから声がして、ビックリして振り返ると坂本がいた。
…坂本は、小柄でメガネをかけた、やや小太りの中年の男性教諭。

「先生、月なんて出ていません」
「なんだ佐々木。夏目先生のエピソードを知らんのか?」

へっ?夏目先生?うちの学校にそんな先生いたっけ?いや、いないよね。いない、いない。ってことは、坂本先生、可哀想に。50代(私の推定だけど、たぶんそれぐらい)で、もうボケ始めてんのか。

「あの、うちの学校に、夏目という名前の先生はいらっしゃいません」
「私の敬愛する夏目漱石先生のことだよ。文豪で、昔の千円札の肖像画にもなった夏目先生だ」

…うちの学校の先生の話じゃなかった。

「いえ、知りません」
「じゃあ、雑学として覚えときなさい。I love youを、月が綺麗ですね、と訳したのだよ」
「え。なんでアイラブユーがそうなるのか、意味がわかりません」

あと、もし、『月が綺麗ですね』がそういう意味だったとして、先生が私に告白してくる意味もわからん。生徒に告白とかキモい。あと、今はまったく月も出てないし。月どころか太陽すら出てない一面曇り空だし。せめて、月が出てる時に言えよ。いや、言われたくないけども。

「さっきのは別に、私が佐々木に告白したわけじゃないぞ?ただ、告白セリフの一例として提示しただけだ」

「へっ??」


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