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陽が沈む湊、陽が昇る湊。

第12章 芽吹く場所

二週間前。

葵の自宅ポストに、金文字で『EDEN』と刻まれた漆黒の封筒が届いた。

中には一枚のカード。

『日々、命の現場で戦う結城葵様へ。
あなた自身の幸福が芽吹く場所をご用意しました。
(紹介者:朝比奈日陽様)』

夜勤明け、葵は半信半疑で指定されたカフェへ向かった。

中央の席でアイスカフェオレを飲んでいると、隣の男性から声をかけられた。

「失礼ですが……結城さん、ですか?」

「……はい」

「急にすみません。日陽さんから、いつも一生懸命で、すごく優しい親友がいると聞いていて。初めまして、神楽坂瑛士と申します」

「日陽とは、どういったお知り合いですか?」

「日陽さんの幼馴染に桐生という人がいまして、彼を通して知り合いました」

(日陽の彼も、桐生だったような……)

瑛士は少し話したあと、仕事の打ち合わせがあると席を立った。

「またお会いできたら嬉しいです」

そう言って店を出ていく瑛士の背中を、葵はしばらく目で追っていた。

鞄から黒い封筒を取り出す。

『幸福が芽吹く場所』

その言葉を見つめ、葵は『EDEN』を信じてみることにした。

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それから葵は、いつものカフェで瑛士と二度ほど偶然出会った。

二度目は週末の朝。私服姿で本を読んでいた瑛士は、葵に気づくと嬉しそうに顔を上げた。

「結城さん、今日も夜勤明けですか? 本当にお疲れ様です」

瑛士は席を立ち、ソファ席を譲った。

「良かったら一緒にいかがですか?」

仕事の話をする葵に、瑛士は静かに耳を傾ける。

「誰かを支える人ほど、ご自身が支えられる場所が必要ですよね」

その言葉は、葵がずっと誰かに言ってほしかったものだった。

葵は、瑛士のさりげない優しさに包まれていった。

三度目に会った時、葵から瑛士に声をかけていた。

「結城さん、おはよう。声をかけてもらえて嬉しいよ」

彼は葵をソファ席に座らせ、アイスカフェオレとカツサンドを買ってきた。

「ここのカツサンド、美味しいですよ。良かったら食べてみてください」

葵は一つ手に取り、もう一つを瑛士に差し出した。

「半分こにしましょう」

「いいですね、半分こ」

二人は笑いながらカツサンドを分け合った。

その日、葵は瑛士と連絡先を交換した。

「また、会いましょう」

葵はその言葉が、なぜか嬉しかった。

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